横断歩道

横断歩道

道を歩いていた。1人で。歩行者信号が赤に変わった。青になるまでしばらく佇む。目線は足元の少し先。横断歩道の最初の白線を目に入るくらい。信号が青に変わる。ゆっくりと一歩を踏み出す。最初の白線を踏む。その瞬間、過去の記憶が蘇った。

幼少期か小学生時代か、どちらともハッキリはしない。だが鮮明な記憶。母に手を繋がれ僕は横断歩道を渡っている。白と黒の線が交互に登場する道路に妙な関心を持ちながら進んでいく。 

横断歩道を中ごろまで進んだとき、ふと思う。「白線の上だけを歩こう」と。まだ発達しきっていない足を一杯に伸ばし、白線から白線へと踏み出していく。少しでも黒を踏んでしまった時は悔しい。だからもっと足を大きく踏み出そうとする。

しかしまだ足りない。その時上にふわっと持ち上げられる。母が白線へと足が届くように少しだけ、ほんの少しだけ持ち上げてくれたのだ。そしてついに白線から白線へと渡ることが出来た。 

そんな記憶を思い出しながら僕は渡っていく。今では白線から次の白線を越えた黒まで届くほどに成長した足を踏み出しながら。